思ったことを口にするアスペルガーと口を利かないアスペルガー


 アスペルガーの人は、自分の価値観や考え方に疑問を持たない人も多い。それはこだわりが強いがために自分の体験や知識を優先し価値観の違いや考え方の違いについて検証する能力が低いことも関係していると思われる。そのために、平気で相手を傷つけてしまうことも多い。

 こだわりが多く、こだわりが強いアスペルガーにとっては、気がついたことをすぐに口にしてしまうのだ。部屋が散らかっていれば「片付けろ」料理が美味しくなければ「美味しくない」自分の好みでない服は「ダサい」と気にせずにバンバン口にしてしまう。

確かに、このブログを読んでいる方々からしてみれば、最悪な人種だと思うかもしれない。
最悪な人種というレッテルに、「それは違う!」と大きな声では言えないのは私も自覚はしています。

 本人は思ったことを口にしているだけなんですよね。だから傷つけようなんて思ってもいないし、責めてもいないのですが、どうも相手にとっては責められているとしか思えないことの方が多いようです。まあ、それを一般的にひどい人というのでしょうけれど・・・・

 ちゃんと、好評価や良いことも言っているんですが、逆に信じられない思いもしない言葉を何度も耳にしていると、褒め言葉なんて届くこともほとんどないのが事実です。一般的には、ほとんど否定的な発言は慎む傾向にあると思いますが、アスペルガーの人は平気で口にしたりすることも多く、悪い印象にとらわれてしまうのは仕方がないことかもしれません。

 しかし例えば、白杖を持つた人が信号待ちをしていたとします。
でも、ほとんどの人は声もかけません。しかし、アスペルガーは気になってしまうとジッとはしていられない人も多いのです。「信号もう少しでかわりますよ。青になりましたよ。」と声をかけたり、
おばあさんがしゃがんでいると、気になると「大丈夫ですか?」と声をかけたり躊躇することなく声をかけられるのは、アスペルガーの長所のひとつです。実際に私も自転車で田舎道を走っている時に熱中症で倒れていたおばあちゃんを助けたこともあります。平日の朝、遠くまでウーキングに出かけて学校に行っているはずの時間帯に中学生の女の子が私服で泣いているのを見て、おやじが声かけるのもと悩みましたが、心配で声をかけたこともありました。「大丈夫?」と声をかけ「はい」という想像通りの会話程度でしたが、そういう誰もが躊躇する時にでも、声をかけられたりします。
 電車で妊婦か太っているのか分からなくても、「どうぞ」と言って席を譲って、もし間違えていたら「間際らしい体型しているお前が悪い、でも妊婦だったらかわいそう」と失礼と親切を天秤にかけて親切を選んぶこともよくあります。
それは、仕事でもまわりが聞きにくいことも、ダメもとで馬鹿なふりをして質問してみたりと本音をぶつけることでうまく行くことも多々あります。

 かと言って、アスペルガーのみんなが優しいというわけではありません。身体障害者の方に興味がなければ声を掛けるどころか、「邪魔なんだよ」と暴言を吐いてしまう人もアスペルガーには多いのです。もし自分が目が見えなかったら、声が聞こえなかったら、なんて考えたことのないアスペルガーにとっては、弱者としか思ず、蹴っ飛ばしたり「邪魔だ」と言うような人もいます。弱い人・困っている人は助けるべきとこだわるか、弱者は邪魔だと考えるかは、同じアスペルガーでもこだわる内容は人それぞれなのです。

 振り込み詐欺を犯す人たちは、みんながみんな発達障害ではないし、殺人を犯す人たちだって普通の人だったりします。育った環境や心の発達の違いでひどいことをします。もし、そんななかにアスペルガーがいたとしたら、更に最悪だとは思いますが、決してアスペルガーだから犯罪を犯せるわけではありません。むしろ変な間違えた正義感を持っている人を含め、柔軟に対応できないルールに従う人が多いかもしれません。

 先日は、娘がiPadでYoutubeを見ながら勉強をしていたので、「勉強中くらいはiPad切りなさい」と言ったのですが「見ていない!、音楽を聴いている!」と反抗的な態度をとるので、私も珍しく怒ったのですが、それでも反抗的な態度でやめないので、「もうお前にはPadもスマホも使わせない、持ってこい!」と取り上げました。

 アスペルガーは、一度決めたことを絶対に貫き通す人も多いので、今回のようなケースの場合、一度取り上げると簡単には返さない人の方が多いのですが、私の場合は、取り上げたことで娘が悲しみどんなに辛いのかと、今の私は、相手の気持ちを考えるということを徹底してしまうんです。
 自分がアスペルガーと分かってからは、『苦手でも相手の気持ちを考えて行動する』という、私にはマイルールができたために、取り上げてしまったことによる罪悪感や傷つけてしまった罪悪感がすごくストレスになるのです。「『なんで、もう使わせない』なんて言ってしまったんだろう?他にも方法があったのでは?」その晩もなかなか眠れずにいましたが、「よし、3日したら戻してあげよう」と思っていたのですが、翌日、iPadがないためテレビを見たりお絵描きをしている娘を見てすぐ返してあげました。取り上げた意味も娘を反省もさせられないダメダメな父親だということはよく分かっています。でも、それだけ自分の感情のコントロールも相手のことを思った行動をとることも苦手なんです。
 ちなみに、返したことを知らない双子のもう一人の娘が、「お父さん、もうiPad返してあげて」と代わりに私に頼みにきました。私が「えっ?もう返したよ」というと、娘は真顔で「ちょろ!」と呆れられ、その言葉を聞いた家族みんなで笑いました。

 もともと無意識で、信念を持って言葉を発しているわけでなく思いついた言葉を発して、発してしまったことを、そのまま継続して貫き通すことも多かった。もしかしたら、発してしまった言葉を考え直すことが苦手でそのまま貫き通していたのかもしれません。今は考えて言葉を発するよう心がけてはいますが、それでもどうしても先に言葉が出てしまうことがあります。とくに、余裕がない時や楽しい時でも気を抜きすぎて気持ちが慌ただしい時によくあります。最近は仕事も忙しくテレワークで家で朝から晩まで働いているせいもあり、かなり精神状態はよくないので、余裕がある少しの時間以外は、あまり会話に参加しないように自分の部屋に閉じこもっています。長い時間会話をしていたら必ず余計な言葉を発してしまうことは確実です。ここにお酒が入ると、また余計なことを口にするかわからないので、お酒の量もかなり減らしています。

 でも、我が家はとても不思議で、そんなお酒や会話に気をつけている今、私の癒しは受験真っ只中の中学生の息子です。息子は、Apple製品に興味があるみたいで、私のとはいつもApple製品の話やたわいもない話をよくしてくれるので、ついつい息子と話していると、お酒も進んで飲み過ぎしまうこともあります。しかし、不思議と息子と話しているとお酒を飲んでも、余計なことは言っていないと思うのですが・・・・学生時代にした悪いことや余計なことを喋り出して、横から妻が睨みつけている視線を感じてはいます。

 私のように、余計なことを口にして失敗を続けていくなか、「まあ、なんとかなる」と思う人、気にもしない人もいれば、逆に「もうしゃべらない」と口をつぐむ人も多いのです。コミュニケーション能力が低い私たちにとっては、口を利かないという選択肢が一番の対策だったりします。このしゃべらないという気持ちは、私も小さい時からよく感じていた感覚です。口は災いの元ということを人より多く体験しているからです。しかし、家族など気を許せる人にはそのリミッターが効かず思ったままに行動してしまうのです。
 でも、必要なことは喋ってくれないと共同生活はできません。でも、私たちは何を口にして良いか、悪いかなんて、瞬間的に判断しながら会話を交わすことが難しいのです。
 「たまに喋れば、余計なことばかり言う」「いつも余計なことばかり言う」という評価がほとんどになってしまいます。だから、一切口を利かないと心に決める人も少なくありません。それは私も例外でなく、気持ちのコントロールができない時には、一切口も利きません。そこに、そんな気持ちが分からない妻は次々と話をされても怒りが込み上げるばかりです。口を開いた時には、我慢していたことが爆発したように口から出てしまいます。そして、また暴言ばかり言うアスペルガーが完成していくのです。

 アスペルガーがうまく、コミュニケーションを維持することは難しいことは、私自身が常に体感しています。できるだけおしゃべりを減らすことが一番の解決策なのは確かです。楽しい時こそおしゃべりが増えて一瞬で場を凍らせる言葉を発してしまうことも何度も経験しました。人の話を聞くことも苦手ですが自分の話は短く、会話は相手に委ねた方がうまくいくことの方が多いようです。そんなことを意識して行動をとっていると、よく私を知らない人は、聞き上手と勘違いしている方もいるかもしれません。

 私も、こんなことがすぐにできるようになったわけではありません。7年間ずっとコミュニケーションの取り方を考え意識し失敗を繰り返し反省しながら、やっと今の状態で、それでも世間一般的にはコミュニケーション能力の低さを実感しています。思ったことを口に出さないと、私の気持ちや考えを伝えることができないのはあたりまえで、結局お互いに理解できないままということも沢山あります。それでも、私は思ったことをなんでも口にするよりは、気持ちが伝わらなくても家族が平穏に暮らせるならと、しゃべる頻度を落としています。
 と私は思っていますが、きっと妻からすれば、前よりは減ったがずっとしゃべっているとうざく思われていることは間違いありません。

 だから、大目に見てくださいなんて言えませんが、少し理解いただけると、少しでもアスペルガーとのコミュニケーションの見方が変わるかもしれません。
今まで、「どうして、この人は変なことばかり言うのだろう?」「どうして、人の話を聞いてくれないのだろう?」「どうしてこんなに頑固なんだろう?」ということが、少しだけでも理解できることが増えるかもしれません。